世間では、新型コロナウイルスの影響で理事会等の開催を見合わせる社団・財団が増えているようです。
実際、当事務所とお付き合いのある団体の中にも理事会が急遽中止になった法人も少なくありません。
私が直接ご相談を受けたケースの中には、構成員が医療従事者であるような医療系の社団に対しては、政府からの方針発表に先駆けて、所管の行政庁の役人から内々に連絡があり、理事会等の開催を見合わせることになった団体もあります。
このように、理事会等の開催を急遽中止、延期される団体の事務局の方から、理事会等の手続きについてご相談を受けることが2月後半から急増しました。
そこで、通常の理事会が開催出来ない場合に活用できる法制度ついてご説明します。
通常の理事会が開催出来ない場合の2つの選択肢
1.WEB会議、テレビ会議による理事会・評議員会
1つ目は、WEB会議、テレビ会議を活用することです。
令和2年02月28日、内閣府のFAQ問2-6-2(Web会議・テレビ会議)が修正されており、公益法人informationで公表されています。
⇒ 令和2年2月28日修正版:内閣府FAQ:問2-6-2(Web会議・テレビ会議)
3月2日現時点で内閣府は当該制度の活用について明示的に推奨してるわけではありませんが、令和2年2月 25 日、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が政府により公表されており、令和2年2月 27 日には、公益法人へ向けて「新型コロナウイルス感染症の発生を踏まえたイベント等の開催について」という文書が公開されています。
この時系列を考えれば、2月28日に内閣府がFAQ修正版を公表したということは、コロナ対策の一環としてWeb会議・テレビ会議の活用を促す意図だと推測されます。
ちなみに私は、コロナに関する政府の方針発表前から、このテレビ会議の活用をお付き合いのある団体に提案していました。
そのため、私が顧問先に案内した資料は、修正前のFAQ問2-6-2ですが、実質的な内容は修正前後で変わっていません。
ただし、公益法人informationでは修正前の内容が消されてしまっているようでしたので、従前のFAQの内容と比較できるように、参考情報として修正前のFAQ問2-6-2も掲載しておきます。
2.決議の省略による理事会等を行う
2つ目は、いわゆる「決議の省略」を使うことです。
「決議の省略」とは、簡単に言えば、関係者全員が書面で同意の意思表示をすれば、可決する旨の決議があったものとみなされるという制度です。
「みなし決議」等と呼ばれる場合もあります。
この手法は、理事会、評議員会、社員総会において認められています。
それぞれの場合について若干違いがありますので、詳細については、内閣府のFAQを参照してください。
このような「決議の省略」は関係者全員の同意が必要になるため、一般的に言えば、極めて小規模な団体を除き成立のハードルが高いと推測されます。
そのため、一定以上の規模のある団体の場合は、WEB会議・テレビ会議の方が推奨です。
どうしても法定の期限内に理事会等が開催できない場合は?
上記のような制度を活用しようとしても、様々な事情からそれが難しい状況の団体もあると思います。
特に公益認定法人の場合について言えば、理事会等を開催した上で、法定の期限内に、各種書類を行政庁に提出する義務があり、それを怠ると、理屈上は認定法違反となる恐れがあるため、この点を心配されている団体もいらっしゃいます。
同様の問題が発生した過去の事件として、東日本大震災があります。
東日本大震災時には、以下のような質問が内閣府によせられました。
事業年度が3月末で終了する公益法人ですが、震災の影響によって、事業計画書や収支予算書を期限(3/31 まで)に提出することができませんでした。認定法違反として過料の処分を受けたり、公益認定を取り消されるのでしょうか。
当法人の定款では定時社員総会・評議員会(以下「定時総会」といいます。)の開催時期を「6月中」と定めていますが、震災の影響によって月内に開催することができません。定款違反になるのでしょうか。
このような疑問ついては、東日本大震災時の対応において、内閣府がよくある誤解や被災地支援に関連して寄せられた質問について回答している下記の資料が参考になると思われます。
今回のコロナの影響による遅延についても、おそらく、東日本大震災の場合と同様の合理的な配慮が取られるのではないかと推測します。
ただし、3月2日現時点では、公益法人informationにおいて内閣府から明確なアナウンスはありませんので、公益法人関係者の皆様におかれましては、念の為、所管行政庁の担当者に相談されることを推奨します。