前回の記事で指摘したとおり、表題の不認定事例においては技術的能力のみが理由として不認定とされています。
内閣府が公表している不認定の答申書はこちら ⇒ 2020年1月10日【答申】一般社団法人日本自然文化協会〔公益認定申請〕
公益認定審査における技術的能力とは?
では、そもそも公益認定の審査における「技術的能力」とは一体どのような内容を指すのでしょうか。
「技術的能力」とは認定法第5条第2号に登場する文言です。
しかし、認定法第5条第2号を読んでも「技術的能力」がどのような概念であるかは明記されていないため、公益認定等ガイドラインを参照します。
上記の不認定答申書で引用されている通り、公益認定等ガイドラインにおいては「事業実施のための技術専門的人材や設備などの能力の確保」とされています。
今回の不認定答申書には詳しく引用されていませんが、引用元である公益認定等ガイドライン(Ⅰ-2)を直接参照すると、以下のように記載されています。
申請時には、例えば検査検定事業においては、人員や検査機器の能力の 水準の設定とその確保が「公益目的事業のチェックポイント」に掲げられ ていることから、検査検定事業を行う法人は、本号の技術的能力との関係 において、当該チェックポイントを満たすことが必要となる。
法人の中核的事業においてチェックポイントで掲げられた技術的能力が欠如している と判断される場合には、公益法人として不認定となることもありうる。
また、事業を行うに当たり法令上許認可等を必要とする場合においては、 認定法第7条第2項第3号の「書類」の提出をもって技術的能力を確認する。
- 専門的な事業を行う団体であればその事業を行うに足りるだけの必要な専門性のある人材の確保や相応の設備が備わっているかどうか。
- 許可が必要な事業であれば、ちゃんと許可を持っているかどうか。
そういう部分が技術的能力の審査対象となるわけです。
また、見落としがちな部分ですが、「法人の中核的事業においてチェックポイントで掲げられた技術的能力が欠如していると判断される場合には公益法人として不認定となることもありうる。」と記載されていることからも、技術的能力という概念、審査基準は非常に重要なものであることがわかります。
なぜならば、当該法人の中核的な事業について技術的能力がなかった場合には当該事業を公益目的事業として認めないのではなく、公益法人そのものが不認定になることもありうるということが上記の公益認定等ガイドラインから読み取れるからです。
公益認定等ガイドラインの記載から読み取れる技術的能力のイメージをわかりやすく言えば、
という審査基準です。
技術的能力の概念は拡張されている
上記のように、公益認定等ガイドラインの定められた当初は、あくまで個別の事業における人材や設備などの体制が整っているかという個別の事業と紐付けられた概念だったわけですが、 公益認定等ガイドラインが制定(平成20年4月)されてから10年以上経過した現在では、この技術的能力という概念は昔に比べてかなり拡張された概念として運用されています。
そのことは公益法人の度重なる不祥事において、行政が不祥事を起こした公益法人に対する指導根拠として技術的能力を持ち出していることを参照すれば、一般の方でも容易に理解できると思います。
現在、公益認定審査における技術的能力の概念は、個別の事業に関連した人材や設備が整っているかどうかを審査する狭い概念に留まるものではなく、法人全体として法令が遵守された状態で適切に事業を行えるのかどうかを審査する概念として、かなり解釈が拡張されて運用されています。
換言すれば、法人運営全体について法令が遵守された体制を要求する根拠、審査基準として運用されていると言えるでしょう。
公益認定申請を目指す団体の立場から言えば、新公益法人制度発足から10年以上経過した現在では、要求される技術的能力の水準(公益認定を得るためのハードル)がかなり上がったことを意味しています。
このような技術的能力についての理解を踏まえた上で、次回の記事では(一社)自然文化協会の不認定事例の中身について解説したいと思います。