公益法人に対する立入検査実施までの流れ

立ち入り検査

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公益法人への立入検査は3年に1度

公益法人には定期的に立入検査が入ります。

これは何か不祥事を起こしたから検査されるということではなく、全法人を対象に、問題の無い法人も含めて定期的に行われるものです。

内閣府が公表している「立入検査の考え方」 によれば、立入検査の頻度は

概ね3年を目途に全ての法人に対する立入検査が一巡するスケジュールで実施することとする。

とされています。

簡単に言えば、概ね3年に1度の頻度で立入検査が実施されることになります。

実務上の経験からもう少し具体的に言うと、「行政庁に事業報告書を4回提出した後に立入検査が入る」というイメージです。

新規に公益法人になった団体のケースを考えると理解しやすいのですが、新規に公益認定を受けた一般法人は、公益認定を受けた日から公益法人になります。

つまり、法人の事業年度で考えた場合、当該法人の公益法人としての初年度は、完全な1年間ではないわけです。

例えば、世間一般では年度が4月1日に始まる法人が多いと思われますが、必ずしもその年度の区切りでタイミングよく公益認定を受けられるわけではないので、新規に公益認定を目指す法人の多くは年度の途中で公益認定を受けることになります。

このように公益法人としての初年度は1年間に満たないので、その法人が公益法人として丸3年以上の活動をした上で行政が立入検査を実施しようとすれば4回事業報告書を提出した後、つまり4期経過した後になるわけです。

もちろんこれは絶対の法則ではなく、自然災害や現在のコロナ禍のように、立入検査が困難な社会状況が生じれば立入検査の間隔が伸びることもあります。

現に、通常であれば昨年度に立入検査が実施されるであろう団体に立入検査が実施されず、今年度に検査がずれ込むという現象が起きています。

昨年はコロナ禍で初めて緊急事態宣言が実施された混乱の一年でしたので、行政側が検査延期の判断をするのも当然のことでしょう。

現在もコロナ禍は継続中ではありますが、行政としても永遠に立入検査を延期するわけにもいかないため、昨年検査を見送ったそのしわ寄せで、今年度の立入検査は通常時に比べて急なスケジュールで立入検査実施されそうです。

通常時の立入検査実施までのスケジュール

立入検査が実施される場合 抜き打ちで役人がいきなり法人の事務所に訪れるわけではありません。

行政書士の私がお手伝いしている法人の場合ですと、まず代理人である行政書士事務所に行政庁から連絡があり、法人との日程調整を打診されます。

概ね検査実施予定時期の2か月前位にはそのような連絡が行政庁からあり、検査予定日の日程調整がなされます。

そして、検査実施予定日の1か月前には正式な公文書で検査実施の通知が法人に届きます。

検査実施を知らせる公文書には検査に訪れる担当の役人の氏名が記載されています。

この検査実施を通知する公文書は概ね1か月前には法人に届くことになっており、担当の役人からも事前にそのような説明を受けることになると思います。

また、担当者によっては、検査の2週間位前に検査当日に確認したい質問事項を送ってくる場合もあります。

過去実際にあったケースですが、事前に調整した検査予定日まで3週間を切っても検査通知の公文書が法人に届かないことがありました。

不審に思い私が担当の役人に問い合わせすると「すいません。忙しくて文書発送を忘れていました。」というお粗末な対応でした。

このようなケースもありますので、行政庁から特段の連絡も無く、事前に調整した検査予定日の1か月前になっても検査実施の公文書の通知が法人届いていないような場合は、念のため担当の役人に問い合わせをした方がよいでしょう。

コロナ禍における立入検査実施までのスケジュール

通常時の立入検査実施までのスケジュールは前述の通りですが、通常時ではない、現在のコロナ禍の場合はどうでしょうか。

緊急事態宣言実施中には流石に立入検査を実施しないものの、緊急事態宣言が実施されている最中でも、「〇月〇日に緊急事態宣言が解除される前提で、〇月頃に立入検査を実施したいので法人側の都合を教えて欲しい」というような連絡が管轄の行政から来ます。

しかし、実際にこれまでそうであったように、緊急事態宣言は当初の予定通りに解除されることはなく、期間が延長されることがあるわけです。

延長も一度とは限らず、再延長、再々延長もありえます。

立入検査では理事長、執行理事、事務局というような責任を持って対応できる立場の役職員のスケジュール調整が必要になりますが、緊急事態宣言が予定通りに解除されることを前提とした行政との日程調整は無駄になる可能性が極めて高いことになります。

そもそも緊急事態宣言によって法人本来の事業のスケジュールも大幅に遅延し、変更されてることが多いはずです。

そのような法人にとっての最優先事項は事業の遅れを取り戻すことです。

予定日に正式に緊急事態宣言が解除されるのか、それとも緊急事態宣言が延長されるのか、それによって検査を受ける法人側の事業実施の予定も変わってきます。

緊急事態宣言が実施されている最中に、予定通りに緊急事態宣言が解除されることを前提にした検査の日程調整を行うことは、法人の運営を阻害することになる可能性が高いです。

緊急事態宣言中に行政から立入検査の連絡が来たらどうする?

緊急事態宣言実施中に行政側から立入検査の日程調整について連絡が来た場合は、必ずしも無理に日程を検討する必要はなく、「緊急事態宣言が正式に解除された後に、改めて担当者(役人)から連絡を頂いた上で、検査の日程調整をしたい」と行政に返答しても決して不合理ではありません。

公益法人は検査の拒否はできませんが、検査を受け入れる前提で無駄のない合理的な日程調整のあり方を提案することは差し支えありません。

今後も緊急事態宣言が出る可能性はありますので、このような対応の仕方もあることは公益法人を運営する事務局の方は知っておいていいと思います。

ただし、緊急事態宣言が解除された後の行政との日程調整においては、通常時のように「2か月前に仮決めして、1か月前に正式な公文書の通知が届く」というような余裕を持ったスケジュールでの立入検査が難しい場合があることは理解しておきましょう。

行政との日程調整が決まった時点で既に検査予定日まで3週間を切っているというような状況もあるからです。

この点については、通常時の立入検査対策と同様に、いつ立入検査に入られても困らないような健全な法人運営を常に心掛けることが何よりの対策になります。

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